看護師の働く場所の選択肢に、老人ホームがあります。
一言で老人ホームと言っても、複数の種類があるのをご存知でしょうか?
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- グループホーム
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- ケアハウス
- 介護療養型医療施設
などです。
このうち1~4は民間施設で、5~8は公的施設です。
民間施設の方が基本的に入居者の負担額が多く、その分丁寧で質の高いサービスを受けられるのが特徴です。
同時に、看護師の忙しさも大きく異なります。(民間施設のほうがゆったりしています)
この記事では、介護付き有料老人ホームで約半年間働いたことのある私が、看護師の仕事内容や役割、有料老人ホームで働くメリット・デメリットを実際の経験を通して紹介しています。
他の老人ホームと区別して「有料」と略して呼ぶことが多いです
こんな人にオススメ
- 有料老人ホームでの看護師の仕事について知りたい
- リアルなメリット・デメリットを知りたい
本記事の内容
- 有料老人ホームの看護師の仕事内容や役割
- 勤務体制、時給
- 有料老人ホームで働くメリット・デメリット
看護師の仕事内容
介護付き有料老人ホームは、介護士が看護師より多く在籍しています。
なので、看護師の仕事は「介護士ができないこと」というイメージです。
具体的には、
- 経管栄養
- インスリン
- 便処置(浣腸、摘便など)
- 内服セット
- 入浴可否の判断
- 軟膏塗布、貼付薬の使用、創処置
- IN/OUTのアセスメント
- 受診の付き添い
- 往診医への相談
- 往診の介助、報告
- 介護士のフォロー
などです。
施設によって異なると思いますが、病院では看護師が行う仕事も介護スタッフがやってくれます。
こんなになんでも介護スタッフの方々がやってくれるのか!と最初は驚きました。
- 体位変換
- オムツ交換
- 排便・排尿カウント
- 食事介助
- 内服介助
- 入浴前のバイタルサイン測定
- 入浴介助(1人に対し週2回程度)
- 洗い物や洗濯物
- ナースコール対応
これらは介護スタッフの仕事となっています。
しかし、明らかに看護師の方が暇で介護士の仕事量が多いため、全体の状況を見つつ介護士の仕事も一緒に行います。
勤務体制、時給
勤務体制
私が働いた有料老人ホームは、介護スタッフには夜勤がありましたが、看護師は早番・遅番の2名体制でした。
要介護5の方も数人入居していましたが、人工呼吸器の管理やこまめな痰吸引を必要とする入居者はおらず、インスリンと経管栄養を朝・昼・夕に実施するため、早番と遅番で朝と夕の対応する感じでした。
上記のように介護スタッフがかなりの量の仕事を担ってくれているため、看護師の仕事量は正直かなり少なかったです。
入居者さんの転倒や調子が悪く急遽受診する場合には看護師が1人付き添うため、もう1人が普段2人でやっている看護師業務を1人でこなすことになりますが、それでも問題なくできる程度の仕事量でした。
休憩が取れないような日はありません。
1日の仕事量をぎゅっとまとめたら、2時間くらいじゃない?と同僚の看護師が言っていたほどです。
時給
介護付き有料老人ホームの看護師の時給は、1800円~2400円くらいが相場という印象です。
重労働はほとんどなく、医療行為も少ないのにこの時給は、かなり高いと思います。
ただ逆に、やることが少なすぎて「時間を売っている」ような感覚でした。
メリット
メリット
- 重労働が少なく、腰痛など起こりにくい
- 入居者さんとゆっくり話せる
- 状態が安定しており急変が少なく、残業になりにくい
介護スタッフがいるため、重労働が少ない
看護師より多くの介護スタッフがいるため、病院では当たり前のように看護師が走り回ってやっていたようなオムツ交換やナースコール対応の量が格段に少ないです。
入浴の介助も基本的には介護スタッフが実施するため、看護師は入浴後の創処置や軟膏塗布などを行うのみです。
介護スタッフの仕事量があまりに多く回っていないような状況ならもちろん一緒にやりますが、病院で走り回っていたのと比べると仕事が少なく、全体を見渡して必要時フォローするような立ち位置です。
入居者さんとゆっくり話せる
有料老人ホームなら全体的に落ち着いているため、入居者さんとゆっくり会話する時間を作ることができます。
体調の話だけでなく、世間話をする余裕もあります。
入居者さんも暇に感じていることがあるため、話し相手になることはwin-winとも言えます。
また、有料老人ホームは費用が他の老人ホームと比較し高いため、金銭的に余裕のある方々が入居されています。
とてもお上品な方が多く、いろいろリッチな経験をされているので、話していておもしろいです。
入居者さんの状態が安定している
有料老人ホームは看取りも対応しているところが多く、実際私も勤務中に看取りの場面はありました。
しかし、病院のような救命処置はなく、穏やかに見送るのみでした。
入居者さんは長期的に見れば状態が悪くなっていく方はいますが、日々状態が変わり使用薬剤が変わり・・・という状況はありません。
点滴をする人がいても、往診医がスタートした点滴を終了後抜針する程度です。
記録が少ない
入居者さんの入浴前のバイタルサイン値や食事量、排泄回数や性状、飲水量などは、介護スタッフが記録してくれます。
看護師は記録を見て、入浴の可否を判断したり、便処置を検討したり、飲水を促したりとアセスメントをします。
看護記録は毎日全員に書く必要はなく、急遽受診した際や、往診の日など、特記事項があるときのみです。
残業がない
勤務終了時に転倒など入居者さんにトラブルがあった際は例外ですが、基本的に残業をするほどの仕事量がないため、残業はありません。
介護スタッフと共に食事介助に入ったときなど、自分の意思で区切りまで介助しようとして多少時間を過ぎることはあります。
同僚の看護師と相性が良ければ楽しい
私が勤めていた有料老人ホームは、看護師の控室として「健康管理室」がありました。
入居者さんの内服薬をセットしたり、カルテを記載したりといった仕事をその部屋でするのですが、実質その部屋は看護師2人でわいわい楽しく過ごす部屋になっていました。
私はとてもラッキーなことに同僚の看護師が全員とても気が合う人で、仕事外でも一緒に飲みに行ったり連絡し合ったりする仲になり、仕事が「仲の良い友達と話しに行く」ような感覚になっていました。
デメリット
デメリット
- 手持ち無沙汰な時間が多く、やりがいを感じない人もいる
- 医師が常にいるわけではないため、判断を任され責任を感じる
- 一緒に働く看護師との相性が重要
仕事量が少なくやりがいを感じにくい
決まった仕事量は少なく、入居者さんとのコミュニケーションも仕事とはいえ連日長話をしていたら入居者さんにも負担になるためほどほどにしていました。
健康管理室や事務所の清掃をしたり、紙カルテの管理を見直したり、季節に合う飾りつけをしたりと自分のアイデアでいろいろ行動させてもらえるのは楽しいですが、毎日時間があるとそれにも限界があります。
時間を切り売りしている感覚があり、「インスリンのタイミングだけ出勤すれば良いのでは?」と思えてくるほどでした。
一緒に働く看護師と相性が悪いと地獄
私の場合は幸い同僚の看護師がとても素敵な人で、一緒に働くのがストレスなく、楽しいばかりでした。
しかし、仕事量が少なく健康管理室に2人で過ごす時間が長いため、相性の悪い看護師と一緒に働く場合はきついと思います。
医師が常にいるわけではない
状態の安定している入居者さんがほとんどですが、たまに調子が悪くなり医師へ相談したいことがあります。
しかし、往診医が来るのは2週間に1回と少ないため、2週間後の入居者さんの状況までは予測することが難しく、事前に指示をもらっておくのは難しいです。
もちろん困ったことがあれば往診医へ電話相談できるのですが、病棟のような「電話をするほどの用件じゃないから、先生が来たときに声をかけよう」ということはできません。
また、1日に何度も電話するわけにはいかないので、よく考えて連絡する必要があります。
看護と介護の棲み分けで揉めがち
これは、施設で長く勤めている看護師と、病棟経験が長く施設経験の短い看護師とで、意見が分かれることが多いです。
施設経験の長い看護師の言い分としては、介護の仕事を何でも手伝っていると入居者さんの受診などで看護師が不在の時に介護スタッフだけで全体をまわすことができなくなってしまうので、基本的に介護の仕事は介護スタッフに任せるべきだ。
病棟経験の長い看護師の言い分としては、余裕があるなら一緒にやればいい。その方が介護スタッフの負担が減るし、入居者さんもゆっくり丁寧に対応してもらえる方がメリットがある。
という感じです。
老人ホームが初めての看護師は、ナースコールが鳴り、自分の手が空いていると当然対応に行きますが、そこで先輩看護師に「介護スタッフが行くから任せておけばいい」と言われモヤモヤすることもあると思います。
これはどちらが正しいというものではありません。
確かに慣れた介護スタッフが対応するほうがスムーズかもしれませんし、看護師が対応したらその旨を介護スタッフに声をかけ「○○さんから△△の希望があり、~~の対応をしています」と伝達する必要があります。
介護士によっては「看護師が一緒に対応してくれて助かる!」と感じる人もいれば、「下手に手伝われると二度手間になるから介護側に任せといて」と良く捉えない人もいると思います。
介護スタッフからの愚痴が多い
良くも悪くも、有料老人ホームは仕事に余裕があります。
そうすると必然的にスタッフ同士で会話する時間が増え、言う必要のない愚痴が出てくることがあります。
「○○さん(←介護スタッフの名前)と仕事に入ると、あの人仕事が遅いから終わらないんですよ~」「○○さん、仕事が雑だから入居者さんに嫌がられていて、一緒に働くとみんな私ばっかりに声かけてきて大変なんですよね~」などなど。
とある介護スタッフから「ちょっと聞いてもいいですか?○○さん(←介護士の名前)がこんな風にオムツ交換をするんですけど、それって皮膚に良くないですよね?やっぱりそうですよね。看護の人がそういうと説得力ある!やっぱり○○さんの仕事って、いい加減なところが多いと思ってたんです~」と言われました。
オムツ交換の手技を正しくすることはもちろん大切なことですが、「看護側がこう言っている」「看護側を味方につけた」というようなニュアンスで○○さんに伝えられると、なんだか角が立ちますよね。
まとめ
介護付き有料老人ホームでの仕事の経験をまとめてみました。
他の老人ホームはもっと忙しく、看護師も常に走り回り介護士と協力して体位変換やオムツ交換、吸引や経管栄養を次々にやり、それでも時間内に仕事が終わらないような状況もあるという話をよく聞きます。
比較的仕事量に余裕がある環境で、入居者さんとたくさん話をして信頼関係を築けるというのは、有料老人ホームの良い所だと思います。
病院とは違い医師が近くにいない環境なので責任は重いですが、困ったときには電話で相談できるので安心です。
私自身、有料老人ホームで働いた半年間はとても充実しており、今でも連絡を取り合う看護師や介護士がいるので、やってよかったなと感じています。