看護 経験

厳しい病気・病状説明の後に、患者さん・ご家族へかける言葉

2022年6月14日

厳しいIC後の患者と家族への声掛け看護師の実践記録

看護師をしていて難しいなと思う場面の1つは、厳しい病状説明を受けた患者さん・ご家族へどのように声をかければ良いかわからないときです。

他には、患者さんが亡くなってしまったとき、ご家族に何て言えば良いのだろう?と迷うこともあります。

看護師になって1~2年目のときは特に「何かフォローの言葉をかけないと」と思う気持ちはあるものの、ほとんどの新人看護師はこれまでの約20年間の人生で、余命宣告直後の人に声をかけたことなんてありませんし、愛していた配偶者や親が亡くなった直後のご家族と関わったこともありません。

かける言葉に正解はありませんが、何か少しでもヒントになれば良いなと思い、この記事を書きます。

こんな人にオススメ

  • 余命宣告などの厳しいIC(病状説明)の後の声掛けに困っている
  • 患者さんのお看取りの後、ご家族へ何て言えば良いか迷う
  • 重要な場面で良い言葉が出てこない自分が嫌になっている

病状説明や死亡確認は医師の仕事、看護師の仕事は?

仲の良い30代半ばの医師が大きな溜め息と共に話してくれました。

医師

今日のIC(インフォームド・コンセントの略、病状説明のこと)、話しながら僕の方が泣きそうだった。『こんなことは言いたくないんだけど』と前置きをして、がん治療が今後できないことや今使っている抗菌薬が効かないと数日で亡くなるかもしれないことを話して、DNAR(延命処置を希望しないこと)のサインをもらったよ。僕たち(医師)は他の医師がどんな風に説明しているか見学したことがないし、教えてもらったこともない。自己流で説明しているけど、いつも言葉に迷うし、もっと良い説明ができるといいなと考えている。他の先生は、どんな感じ?」

初めて医師側の気持ちを知りました。
重要な病状説明のときは看護師も同席することが多く、看護師はいろいろな先生の病状説明を聞く機会がありますが、その医師は病状説明の言葉を先輩医師から教わる機会はほとんどなかったそうです。

私が病状説明に同席するとき、医師はいつも淡々と事実のみを話すイメージがあります。「ご主人はこの病気で、こんな症状に対してこんな治療をしてきましたが、治療の効果が乏しく、今後良くなる見込みがありません」と言った感じです。
決して冷たいわけではありませんが、患者さんやご家族に感情移入はしないんだなと思っていました。なので、医師がそんなに患者さんやご家族の気持ちを考えて、迷いながら話しているとは思いませんでした。

それを聞いて思わず、その医師に対して「先生はそこまで考えなくて良いですよ。患者さんやご家族、私たちにはわからない患者さんの状態を、事実だけをわかりやすく説明してもらえたら、その後の患者さん・ご家族の気持ちのフォローは私たち看護師の仕事です」と、かっこつけた返事をしてしまいました。

医師

あと、死亡確認のときももっと気の利いたことを言いたいけど、結局『力不足ですみませんでした』としか言えないんだよね

亡くなった患者さんの体を拭いたりシャンプーをしたり、お気に入りの服や浴衣への着替えを手伝うのは看護師の仕事です。お見送り(出棺)の段取りの確認も必要です。その際にはご家族と関わることが多いです。

患者さんやご家族の気持ちを考えるのは、先生たちより私たち看護師の仕事だよね。
だけど、どのように関われば患者さん・ご家族の気持ちを少しでも救うことができるのだろうか?

言葉のレパートリーを増やすノート

私は自分の担当患者さんについて、誰よりも詳しくありたいという気持ちを常に持っています。
なので、重要な病状説明はどんなに忙しくても同席し、患者さんやご家族がどう感じているのか知っておきたいし、少しでも力になりたいと思っています。
そして最期のときは、私が担当したいと思っています。

そうは思っていますが、1~2年目の私は、いざその場で何て言えば良いのか困っていました。
新人時代の先輩は、「たくさん先輩の言葉を聞いたり本を読んだりして、勉強しなさい」と教えてくれました。

そうか、経験がなくて、悩んでもわからないことは、勉強するんだ。
こういうとき、先輩はどのように関わっているのか、参考にさせてもらおう。
本屋さんに行き、患者さんやご家族が執筆した闘病生活の本を読もう。どんな気持ちでいて、どんな言葉が嬉しいのか知ろう。
その後、たくさんの本を読み、こっそり先輩と患者さんの会話に聞き耳を立て、言葉の“引き出し”を増やす努力をしました。
先輩によっても、患者さん・ご家族の性格によっても、かける言葉は本当に様々でした。(特に言葉をかけないときもありました。)

そして私は仕事が終わるとノートを開き、その日先輩が使っていた言葉を忘れないようメモしていました。
ノートが半分くらい埋まったとき、担当患者さんの病状説明に同席する機会がありました。
そして、とても厳しい病状説明の後、ノートに書き溜めた言葉の引き出しから最も今の場面に合っていると思った、以前先輩が患者さんに言っていたのと同じ言葉をその患者さんにかけました。

その患者さんが退院するとき、その日の私の言葉に支えられたと、言ってくれました。
自分の言葉じゃないのが悔しかったですが、自分が選んだ言葉で患者さんの役に立てたのが、嬉しかったです。
患者さんの治療がうまくいかないときでも、私たち看護師が患者さんを少しだけ癒すことはできるのだと、改めて感じました。

現在は、そのノートは処分してしまい、ありません。(先輩の言葉以外に、当時の彼氏に対して思うことなども書いていたので、新しい彼氏と同棲するタイミングで捨てました笑)
看護師を何年も続けていると、言葉の引き出しは増え、ノートはいらなくなるのです。
最初は先輩の言葉を真似していたのが、何度も使い、アレンジを重ね、私自身の言葉として自然に出てくるようになりました。

大切なのは1つの言葉ではない

新人時代、病状説明後の声掛けに関しては、上記のとおり患者さんに感謝の言葉をいただくことができ、少しずつ自信をつけていきました。
しかし、患者さんが亡くなる時、亡くなった後のご家族との関わりには、苦手意識がありました。

そして、看護師1年目の終わり、3月末に最も尊敬している先輩に質問しました。

私「患者さんの最期は、ご家族にとって一生記憶に残る大切な場面だと思います。その責任ある場面で、私は何と言えば良いのかわかりません。先輩は日頃、ご家族へどんな声掛けをしていますか?」

先輩「何言っているの。大切なのは、最期に気の利いたことを言うことじゃないよ。それまでにその患者さんやご家族とどんな関係を築いてこれたかが大切なんだよ。今までの対応が悪かった看護師が最期に少し良いことを言ったって、そんなのは全然印象に残らない。だけど、ずっとお世話になっていた特別な看護師が最期にいてくれたら、特に何も言わなくたって、ご家族はその看護師に感謝するんだよ。『あなたに担当してもらえて、良かった』とご家族が言うのは、最期の日の言葉はそんなに重要じゃない。そんな言葉の1つで悩むより、今担当している患者さんと、今しっかり関係を築きなさい。」

とても納得しました。
別にかっこいい言葉も気の利いた言葉も必要なくて、これまで通りの話し方でご家族と関わり、そのとき私が何か言いたくなったら正直な気持ちを話し、特に何も言えなければ言わなくてもいい。
最期の場面はいつか来るのだけど、不必要に緊張しなくていいし、前もって何を言うか考える必要なんてないと気づきました。

声掛けは、みんなちがってみんないい

新人時代悩んでいた患者さんやご家族への声掛け。
今後輩が悩んでいたら、正解はないのだからそんなに悩まなくていいし、下手に準備もしなくていいと伝えます。

そのとき言いたいことを言えばいいし、言えなくたっていい。
看護師歴の長い先輩たちも、人によって対応は全然違うと思います。
それまでに信頼関係を築けていれば、どんな言葉も素敵で、良い言葉なのです。

新人時代、闘病生活をしている人の本をたくさん読むことで患者さんの気持ちを知りなさいと先輩が教えてくれました。
こちらの記事では、現在私の手元にあるぜひ読んでもらいたい本を紹介しています。

リアルなブログの情報

闘病中の方のブログを読むことで勉強になることがたくさんあります。
私は小林麻央さんのオフィシャルブログKOKORO.をよく読ませてもらっていました。
仕事で患者さんやご家族と関わるときの参考になりますし、私も将来病気になったらこんなに素敵な考えを持って生きていけるだろうか?と考えるきっかけにもなりました。

また、化学療法(抗がん剤治療)中の方のブログは、とても勉強になります。
副作用で吐き気があるとき「これなら食べられた」というものや、副作用で手荒れがひどいときに「このハンドクリームが優秀!」という情報など、患者さん毎に副作用は違いますし相性の良いものも違いますが、迷っている人の相談に乗ったり提案したりするための知識の引き出しとして、多くの方々の経験を、ブログを通して教えてもらっています。

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